日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻

本ブログでは、日商簿記検定2級「工業簿記」について分かりやすく解説します。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑩「中身」の話、総合原価計算

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑩「中身」の話、総合原価計算

 

①総合原価計算とは何か

 今日の製造企業は、多くが見込みで大量生産する企業です。その場合は、総合原価計算が行われます。

 1ヵ月間で完成した製品の原価をまとめて計算し、それを完成品の数量で割れば、製品1個の原価を知ることができます。

 総合原価計算では、仕掛品、つまり作りかけの状態のものの評価がポイントになります。この点が、最初分かりにくいですし、ここが分かれば、総合原価計算のすべてが分かります。

 

②加工費とは何か

 上図にあるように、「個別原価計算」では、「直接材料費」、「直接労務費」、「直接経費」、「製造間接費」に分けて計算しますが、「総合原価計算」では、「直接材料費」以外は、すべて「加工費」として計算します。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 

③加工進捗度

 上掲の設例に、「加工は50%進んでいる」とあります。これを「加工進捗度(かこうしんちょくど)」と言います。下図のように、「直接材料費」は、最初に全部投入されるため、加工進捗度が0%でも、100%でも同じです。

 一方、「加工費」は、加工進捗度が進むと増えていきます。

 上掲の設例では、単純化のために前月から引き継いだ仕掛品が無いものとされています。したがって、下図のように、当期製造費用を完成高と仕掛品次月繰越高とに分けるだけで良いことになります。

 

④仕掛品の評価

 総合原価計算の仕掛品の評価については、直接材料費と加工費に分けて計算します。まず、上図の左側の直接材料費について見ていきましょう。設例により、月初投入量は200個、直接材料費は60,000円です。直接材料費については、それを完成品(140個)と月末仕掛品(60個)とに分ければよいだけです。したがって、完成品の金額は、60,000円×140個/200個=42,000円です。月末仕掛品は、60,000円×60個/200個=18,000円です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください、設例により、月末仕掛品の加工進捗度は50%なので、完成品に換算して60個×50%=30個となります。つまり、60個を半分仕上げる加工費で、完成品まで仕上げていたら30個分になるということです。この30個と貸方の上部にある完成品140個を足した170個が、借方の月初投入170個となります。そのため、月初投入79,560円を完成品に分ける計算は以下のようになります。完成品分、79,560円×140個/170個=65,520円。月末仕掛品分、79,560円×30個/170個=14,010円。

 

⑤総合原価計算表:設例の解答

 これらの計算結果をまとめたものが、下掲の総合原価計算表です。

 一番下の「完成品単位原価」は、3行目の「完成品原価」を完成品個数の140個で割ったものです。「@」は、「単価」を意味します。そして、右端の「合計」の下3行が設例の解答です。