日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻

本ブログでは、日商簿記検定2級「工業簿記」について分かりやすく解説します。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑫「中身」の話、総合原価計算(その3)

①総合原価計算(先入先出法)

 総合原価計算では、仕掛品、つまり作りかけの状態のものの評価がポイントになります。この点が、最初分かりにくいですし、ここが分かれば、総合原価計算のすべてが分かります。

 上掲のように、「工業簿記」攻略とらの巻⑩では、次月繰越のみの例でした。今回も、前回同様、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいる設例で説明します。今回は、先入先出法による計算です。

 

②加工費とは何か

 上図にあるように、「個別原価計算」では、「直接材料費」、「直接労務費」、「直接経費」、「製造間接費」に分けて計算しますが、「総合原価計算」では、「直接材料費」以外は、すべて「加工費」として計算します。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 今回の設例は、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪と同じ設例です。今回も、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいます。今回も、これを月初繰越と呼びます。月末には、次月に繰越される仕掛品が存在し、今回も、月末繰越と呼びます。

 

③加工進捗度

 上掲の設例に、「加工は50%進んでいる」とあります。これを「加工進捗度(かこうしんちょくど)」と言います。下図のように、「直接材料費」は、最初に全部投入されるため、加工進捗度が0%でも、100%でも同じです。

 一方、「加工費」は、加工進捗度が進むと増えていきます。

 

④仕掛品(加工費)の「当月投入高」の換算個数の確定

 総合原価計算の仕掛品の評価については、直接材料費と加工費に分けて計算します。最初に、下図の左側の直接材料費について見ていきましょう。これも前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪と同じです。

 設例の【生産データ】により、左側の仕掛品(直接材料費)の月初繰越は180個、当月投入量は540個、完成品は600個、月末繰越は120個です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください。「①月末繰越」は、設例の【生産データ】により、120個、進捗度が80%なので、96個に換算されます。それに「②当月完成」600個を足します。「②当月完成」は、進捗度が100%なので、換算する必要はありません。次に「③月初繰越」は、180個、進捗度が50%なので、換算個数は90個となります。

 「月末繰越」96個に「②当月完成」600個を加え、そこから「③月初繰越」90個を引くと「④当月投入高」は、606個となります。ここまでは、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪と同じです。

 

⑤仕掛品の評価(先入先出法)

 ここからは、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪とは違います。「②当月完成高」には、まず、「③月初繰越高」が入ります。「③月初繰越高」は、月初の時点で作りかけの状態で引き継がれたものなので、これから仕上げて完成させたと考えるわけです。

 そして、「②当月完成高」の残りについては、「④当月投入高」の一部が割り当てられ、「①月末繰越高」には、「④当月投入高」の残りが割り当てられます。

 以上の説明をもとに、直接材料費と加工費について、「月初繰越」と「当月投入」の割り当てを示したのが下図です。

 この図をもとに、金額を割り振りましょう。

 直接材料費については、月初繰越36,000円が、そのまま完成品に入ります。完成品の残り420個については、当月投入129,600円×420個/540個の100,800円が割り当てられます。月末繰越は、129,600円×120個/540個=28,800円が割り当てられます。

 次に、右側の加工費です。月初繰越28,080円は、そのまま完成品に入ります。完成品の残り510個については、当月投入189,072円×510個/606個の159,120円が割り当てられます。月末繰越は、189,072円×96個/606個=29,952円が割り当てられます。

 

⑥総合原価計算表:設例の解答

 これらの計算結果をまとめたものが、下掲の総合原価計算表です。

 一番下の「完成品単位原価」は、3行目の「完成品原価」を完成品個数の600個で割ったものです。「@」は、「単価」を意味します。そして、右端の「合計」の下3行が設例の解答です。