日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻

本ブログでは、日商簿記検定2級「工業簿記」について分かりやすく解説します。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑬「中身」の話、標準原価計算(その1)

①標準原価計算とは何か

 上図の左端が「売値」、その右横が「実際原価」としましょう。その差額が「もうけ」です。この「もうけ」を増やす1つの方法は「売値」を上げることです。しかし、ライバル企業がいるとこれはむつかしい戦略です。商品1個当たりの「もうけ」は増えても、ライバル企業が値上げしなければ、お客さんはそちらに流れて売れる個数が減り、トータルの「もうけ」は減ってしまうからです。

 そこで、もう一つの方法が「実際原価」を引き下げることです。その場合に目安となるのが右端の「標準原価」です。

 この「標準原価」と「実際原価」とを比べて分析し、改善な点を見つけて「実際原価」を引き下げる方策を探るのですが、今回は、「標準原価」についてのみ解説します。「標準原価」と「実際原価」とを比べての分析と「器」としての簿記の話は、次回行います。

 

②管理可能費と管理不能

 実際原価を引き下げようとする場合、例えば、上図の「管理可能費」である「歩留まり率の向上」は、無駄をなくしたり、失敗を減らすといった努力で達成可能です。一方、ある買入部品を提供している会社が1社のみで、その会社に対して値下げ交渉の余地がないとすると「買入部品費」を下げることはできません。

 「管理可能費」を引き下げる際の目安となるのが「標準原価」です。

 

③標準原価

 標準原価を構成する①標準直接材料費、②標準直接労務費、③標準製造間接費は、それぞれ次のように求められます。

 そして、これら3つの要素を足したものが標準原価です。なお、②標準直接労務費と③標準製造間接費を足したものが、加工費です。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 仮に、標準直接材料費は、標準単価@150円×標準消費量2枚で、300円とします。以下、標準直接労務費は、標準賃率@60円×標準直接作業時間3時間で、180円。標準製造間接費は、標準配賦率@90円×標準操業度(標準直接作業時間)3時間で、270円。3つの合計額、つまり製品1個当たりの標準原価を750円と仮定します。

 以上を前提として、今回は以下の設例で説明していきます。

 

④仕掛品(加工費)の「当月投入高」の換算個数の確定

 設例の【生産データ】により、左側の仕掛品(直接材料費)の月初繰越は180個、当月投入量は540個、完成品は600個、月末繰越は120個です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください。「①月末繰越」は、設例の【生産データ】により、120個、進捗度が80%なので、96個に換算されます。それに「②当月完成」600個を足します。「②当月完成」は、進捗度が100%なので、換算する必要はありません。次に「③月初繰越」は、180個、進捗度が50%なので、換算個数は90個となります。

 「月末繰越」96個に「②当月完成」600個を加え、そこから「③月初繰越」90個を引くと「④当月投入高」は、606個となります。ここまでは、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪、⑫と同じです。

 この図をもとに、月末仕掛品、月初仕掛品の標準原価と当月標準製造費用を計算しましょう。

 

⑤設例の解答

 直接材料費、直接労務費、製造間接費の単価は「標準原価カード」に示されているものです。各個数は、前節の図で確定したものです。