日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻

本ブログでは、日商簿記検定2級「工業簿記」について分かりやすく解説します。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑭「中身」と「器」としての簿記の話、標準原価計算(その2)

①原価差異とは何か

 前回の「工業簿記」攻略とらの巻⑬標準原価計算(その1)と同様、上図の左端が「売値」、その右横が「実際原価」としましょう。その差額が「もうけ」です。この「もうけ」を増やす一つの方法が「実際原価」を引き下げることでした。その場合に目安となるのが右端の「標準原価」でした。

 この「標準原価」と「実際原価」の差額が、「原価差異」です。この「原価差異」を分 析し、改善可能な点を見つけて「実際原価」を引き下げる方策を探り、実際原価を引き下げるのが原価管理です。

 

②実際原価の計算と原価差異

 実際原価を計算した後、標準原価と比較します。実際原価の方が大きい場合の原価差異を「不利差異」、標準原価の方が大きい原価差異を「有利差異」と呼びます。

 

③当月標準製造費用

 以下では、直接材料費を例として原価差異の分析について解説します。前回の「工業簿記」攻略とらの巻⑬標準原価計算(その1)で「当月製造費用」を以下のように求めました。

 上掲のように、「当月製造費用」のうち「直接材料費」は、162,000円です。

 上掲のように、仮に、当月の直接材料費の実際単価が301円、実際消費量が542個だったとしましょう。その結果、「実際直接材料費」は163,142円となります。当月の「標準直接材料費」162,000円との差額、つまり「原価差異」は、1,142円です。図で示すと以下のようになります。

 これを価格による差異である「価格差異」と消費量による差異である「数量差異」とに分けます。まず、「価格差異」は、以下のようになります。

 実際単価301円と標準単価300円の差額1円の542個分ですから542円で、「不利差異」となるので、金額の前に「△」を付けています。

 次に、「数量差異」は、以下のようになります。

 実際消費量542個と標準消費量540個の差の2個分に標準単価300円を掛けた600円で、「不利差異」となるので、金額の前に「△」を付けています。「価格差異」と「数量差異」とを重ねて示したのが、下図です。

 以上が、直接材料費を例とした原価差異の分析についての解説です。

 次に、この「原価差異」を「器」としての簿記で、どのように扱うかという話になります。「原価差異」を原価要素勘定別で把握する「シングル・プラン」と、「仕掛品」勘定で把握する「パーシャル・プラン」とがあります。まず、「シングル・プラン」は以下のようになります。

 「材料」、「賃金」、「製造間接費」の各勘定の借方には実際原価、貸方には標準原価が記入されるので、「原価差異」は各勘定で把握されます。

 次に、「パーシャル・プラン」は以下のようになります。

 「材料」、「賃金」、「製造間接費」の各勘定の借方と貸方には、ともに標準原価が記入されるので、「原価差異」は「仕掛品」勘定で把握されます。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑬「中身」の話、標準原価計算(その1)

①標準原価計算とは何か

 上図の左端が「売値」、その右横が「実際原価」としましょう。その差額が「もうけ」です。この「もうけ」を増やす1つの方法は「売値」を上げることです。しかし、ライバル企業がいるとこれはむつかしい戦略です。商品1個当たりの「もうけ」は増えても、ライバル企業が値上げしなければ、お客さんはそちらに流れて売れる個数が減り、トータルの「もうけ」は減ってしまうからです。

 そこで、もう一つの方法が「実際原価」を引き下げることです。その場合に目安となるのが右端の「標準原価」です。

 この「標準原価」と「実際原価」とを比べて分析し、改善な点を見つけて「実際原価」を引き下げる方策を探るのですが、今回は、「標準原価」についてのみ解説します。「標準原価」と「実際原価」とを比べての分析と「器」としての簿記の話は、次回行います。

 

②管理可能費と管理不能

 実際原価を引き下げようとする場合、例えば、上図の「管理可能費」である「歩留まり率の向上」は、無駄をなくしたり、失敗を減らすといった努力で達成可能です。一方、ある買入部品を提供している会社が1社のみで、その会社に対して値下げ交渉の余地がないとすると「買入部品費」を下げることはできません。

 「管理可能費」を引き下げる際の目安となるのが「標準原価」です。

 

③標準原価

 標準原価を構成する①標準直接材料費、②標準直接労務費、③標準製造間接費は、それぞれ次のように求められます。

 そして、これら3つの要素を足したものが標準原価です。なお、②標準直接労務費と③標準製造間接費を足したものが、加工費です。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 仮に、標準直接材料費は、標準単価@150円×標準消費量2枚で、300円とします。以下、標準直接労務費は、標準賃率@60円×標準直接作業時間3時間で、180円。標準製造間接費は、標準配賦率@90円×標準操業度(標準直接作業時間)3時間で、270円。3つの合計額、つまり製品1個当たりの標準原価を750円と仮定します。

 以上を前提として、今回は以下の設例で説明していきます。

 

④仕掛品(加工費)の「当月投入高」の換算個数の確定

 設例の【生産データ】により、左側の仕掛品(直接材料費)の月初繰越は180個、当月投入量は540個、完成品は600個、月末繰越は120個です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください。「①月末繰越」は、設例の【生産データ】により、120個、進捗度が80%なので、96個に換算されます。それに「②当月完成」600個を足します。「②当月完成」は、進捗度が100%なので、換算する必要はありません。次に「③月初繰越」は、180個、進捗度が50%なので、換算個数は90個となります。

 「月末繰越」96個に「②当月完成」600個を加え、そこから「③月初繰越」90個を引くと「④当月投入高」は、606個となります。ここまでは、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪、⑫と同じです。

 この図をもとに、月末仕掛品、月初仕掛品の標準原価と当月標準製造費用を計算しましょう。

 

⑤設例の解答

 直接材料費、直接労務費、製造間接費の単価は「標準原価カード」に示されているものです。各個数は、前節の図で確定したものです。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑫「中身」の話、総合原価計算(その3)

①総合原価計算(先入先出法)

 総合原価計算では、仕掛品、つまり作りかけの状態のものの評価がポイントになります。この点が、最初分かりにくいですし、ここが分かれば、総合原価計算のすべてが分かります。

 上掲のように、「工業簿記」攻略とらの巻⑩では、次月繰越のみの例でした。今回も、前回同様、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいる設例で説明します。今回は、先入先出法による計算です。

 

②加工費とは何か

 上図にあるように、「個別原価計算」では、「直接材料費」、「直接労務費」、「直接経費」、「製造間接費」に分けて計算しますが、「総合原価計算」では、「直接材料費」以外は、すべて「加工費」として計算します。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 今回の設例は、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪と同じ設例です。今回も、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいます。今回も、これを月初繰越と呼びます。月末には、次月に繰越される仕掛品が存在し、今回も、月末繰越と呼びます。

 

③加工進捗度

 上掲の設例に、「加工は50%進んでいる」とあります。これを「加工進捗度(かこうしんちょくど)」と言います。下図のように、「直接材料費」は、最初に全部投入されるため、加工進捗度が0%でも、100%でも同じです。

 一方、「加工費」は、加工進捗度が進むと増えていきます。

 

④仕掛品(加工費)の「当月投入高」の換算個数の確定

 総合原価計算の仕掛品の評価については、直接材料費と加工費に分けて計算します。最初に、下図の左側の直接材料費について見ていきましょう。これも前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪と同じです。

 設例の【生産データ】により、左側の仕掛品(直接材料費)の月初繰越は180個、当月投入量は540個、完成品は600個、月末繰越は120個です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください。「①月末繰越」は、設例の【生産データ】により、120個、進捗度が80%なので、96個に換算されます。それに「②当月完成」600個を足します。「②当月完成」は、進捗度が100%なので、換算する必要はありません。次に「③月初繰越」は、180個、進捗度が50%なので、換算個数は90個となります。

 「月末繰越」96個に「②当月完成」600個を加え、そこから「③月初繰越」90個を引くと「④当月投入高」は、606個となります。ここまでは、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪と同じです。

 

⑤仕掛品の評価(先入先出法)

 ここからは、前回「工業簿記」攻略とらの巻⑪とは違います。「②当月完成高」には、まず、「③月初繰越高」が入ります。「③月初繰越高」は、月初の時点で作りかけの状態で引き継がれたものなので、これから仕上げて完成させたと考えるわけです。

 そして、「②当月完成高」の残りについては、「④当月投入高」の一部が割り当てられ、「①月末繰越高」には、「④当月投入高」の残りが割り当てられます。

 以上の説明をもとに、直接材料費と加工費について、「月初繰越」と「当月投入」の割り当てを示したのが下図です。

 この図をもとに、金額を割り振りましょう。

 直接材料費については、月初繰越36,000円が、そのまま完成品に入ります。完成品の残り420個については、当月投入129,600円×420個/540個の100,800円が割り当てられます。月末繰越は、129,600円×120個/540個=28,800円が割り当てられます。

 次に、右側の加工費です。月初繰越28,080円は、そのまま完成品に入ります。完成品の残り510個については、当月投入189,072円×510個/606個の159,120円が割り当てられます。月末繰越は、189,072円×96個/606個=29,952円が割り当てられます。

 

⑥総合原価計算表:設例の解答

 これらの計算結果をまとめたものが、下掲の総合原価計算表です。

 一番下の「完成品単位原価」は、3行目の「完成品原価」を完成品個数の600個で割ったものです。「@」は、「単価」を意味します。そして、右端の「合計」の下3行が設例の解答です。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑪「中身」の話、総合原価計算(その2)

①総合原価計算(平均法)

 総合原価計算では、仕掛品、つまり作りかけの状態のものの評価がポイントになります。この点が、最初分かりにくいですし、ここが分かれば、総合原価計算のすべてが分かります。

 上掲のように、「工業簿記」攻略とらの巻⑩では、次月繰越のみの例でした。今回は、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいる設例で説明します。今回は、平均法による計算です。

 

②加工費とは何か

 上図にあるように、「個別原価計算」では、「直接材料費」、「直接労務費」、「直接経費」、「製造間接費」に分けて計算しますが、「総合原価計算」では、「直接材料費」以外は、すべて「加工費」として計算します。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 今回の設例では、前月繰越、つまり、月初の時点で作りかけの状態にある仕掛品を引き継いでいます。今回、これを月初繰越と呼びます。月末には、次月に繰越される仕掛品が存在し、今回は、月末繰越と呼びます。

 

③加工進捗度

 上掲の設例に、「加工は50%進んでいる」とあります。これを「加工進捗度(かこうしんちょくど)」と言います。下図のように、「直接材料費」は、最初に全部投入されるため、加工進捗度が0%でも、100%でも同じです。

 一方、「加工費」は、加工進捗度が進むと増えていきます。

 

④仕掛品(加工費)の「当月投入高」の換算個数の確定

 総合原価計算の仕掛品の評価については、直接材料費と加工費に分けて計算します。最初に、下図の左側の直接材料費について見ていきましょう。

 設例により、左側の仕掛品(直接材料費)の月初繰越は180個、当月投入量は540個、完成品は600個、月末繰越は120個です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください。「①月末繰越」は、設例の【生産データ】により、120個、進捗度が80%なので、96個に換算されます。それに「②当月完成」600個を足します。「②当月完成」は、進捗度が100%なので、換算する必要はありません。次に「③月初繰越」は、180個、進捗度が50%なので、換算個数は90個となります。

 「月末繰越」96個に「②当月完成」600個を加え、そこから「③月初繰越」90個を引くと「④当月投入高」は、606個となります。

 

⑤仕掛品の評価

 直接材料費は月初繰越36,000円と当月投入129,600円の合計額165,600円を完成品(600個)と月末仕掛品(120個)とに分ければよいだけです。したがって、完成品の金額は、165,600円×600個/720個=138,000円です。月末仕掛品は、165,600円×120個/720個=27,600円です。

 次に、右側の加工費です。月初繰越28,080円と当月投入189,072円の合計額217,152円を完成品と月末繰越に分ける計算は以下のようになります。完成品分、217,152円×600個/696個=187,200円。月末仕掛品分、217,152円×96個/696個=29,952円。

 

⑥総合原価計算表:設例の解答

 これらの計算結果をまとめたものが、下掲の総合原価計算表です。

 一番下の「完成品単位原価」は、3行目の「完成品原価」を完成品個数の600個で割ったものです。「@」は、「単価」を意味します。そして、右端の「合計」の下3行が設例の解答です。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑩「中身」の話、総合原価計算

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑩「中身」の話、総合原価計算

 

①総合原価計算とは何か

 今日の製造企業は、多くが見込みで大量生産する企業です。その場合は、総合原価計算が行われます。

 1ヵ月間で完成した製品の原価をまとめて計算し、それを完成品の数量で割れば、製品1個の原価を知ることができます。

 総合原価計算では、仕掛品、つまり作りかけの状態のものの評価がポイントになります。この点が、最初分かりにくいですし、ここが分かれば、総合原価計算のすべてが分かります。

 

②加工費とは何か

 上図にあるように、「個別原価計算」では、「直接材料費」、「直接労務費」、「直接経費」、「製造間接費」に分けて計算しますが、「総合原価計算」では、「直接材料費」以外は、すべて「加工費」として計算します。

 それでは、計算例でもって話を進めていきましょう。

 

③加工進捗度

 上掲の設例に、「加工は50%進んでいる」とあります。これを「加工進捗度(かこうしんちょくど)」と言います。下図のように、「直接材料費」は、最初に全部投入されるため、加工進捗度が0%でも、100%でも同じです。

 一方、「加工費」は、加工進捗度が進むと増えていきます。

 上掲の設例では、単純化のために前月から引き継いだ仕掛品が無いものとされています。したがって、下図のように、当期製造費用を完成高と仕掛品次月繰越高とに分けるだけで良いことになります。

 

④仕掛品の評価

 総合原価計算の仕掛品の評価については、直接材料費と加工費に分けて計算します。まず、上図の左側の直接材料費について見ていきましょう。設例により、月初投入量は200個、直接材料費は60,000円です。直接材料費については、それを完成品(140個)と月末仕掛品(60個)とに分ければよいだけです。したがって、完成品の金額は、60,000円×140個/200個=42,000円です。月末仕掛品は、60,000円×60個/200個=18,000円です。

 次に、右側の加工費です。右下の説明を見てください、設例により、月末仕掛品の加工進捗度は50%なので、完成品に換算して60個×50%=30個となります。つまり、60個を半分仕上げる加工費で、完成品まで仕上げていたら30個分になるということです。この30個と貸方の上部にある完成品140個を足した170個が、借方の月初投入170個となります。そのため、月初投入79,560円を完成品に分ける計算は以下のようになります。完成品分、79,560円×140個/170個=65,520円。月末仕掛品分、79,560円×30個/170個=14,010円。

 

⑤総合原価計算表:設例の解答

 これらの計算結果をまとめたものが、下掲の総合原価計算表です。

 一番下の「完成品単位原価」は、3行目の「完成品原価」を完成品個数の140個で割ったものです。「@」は、「単価」を意味します。そして、右端の「合計」の下3行が設例の解答です。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻  ⑨「中身」の話、個別原価計算

第9回「中身」の話、個別原価計算

①個別原価計算とは何か

 今日の製造企業は、多くが見込みで大量生産する企業です。その場合は、総合原価計算が行われます。

 個別原価計算とは、受注生産を行う企業、つまり顧客の注文に応じて生産する企業で実施される原価計算です。しかし、今日でも一部の業種では、受注生産がメインです。代表例は、建築業と造船業です。

 

②個別原価計算と製造指図書

 個別原価計算を行う企業では、顧客からの注文を製造指図書として製造現場に伝え、現場では、それに従って製造が行われます。そして、個別原価計算は、原価計算表を使って行われます。

 造船業の例で見ていきましょう。今、3つの製品、No.1(タンカー)、No.2(客船)そしてNo.3(コンテナ船)を並行して製造しているとしましょう。上図は、製造指図書のうち、費用だけを抜き出したものです。実際の製造指図書には、顧客からの注文を基に様々な指示が記されています。

 

③「当月投入高」のみの原価計算

 上図は、費用のみを製造指図書から写した原価計算表です。原価計算は、基本的に月別に行われます。仮に月末にNo.1(タンカー)とNo.2(客船)が完成し、注文主に引き渡されたとしましょう。

 

④「前月繰越」と「備考」を追加した原価計算


 先ほどの原価計算表には、「前月繰越」と「次月繰越」が反映されていませんでした。上図は、「前月繰越高」、「当月投入高」、「当月完成高」、「次月繰越高」の関係を示しています。「前月繰越」は、前月から作りかけの状態で引き継がれたものを示します。「当月投入高」は、今月中に投入された材料費、労務費、経費、製造間接費等です。そして、「次月繰越高」は、月末時点で未完成のまま次月に引き継がれるものを表します。

 上図では、先ほどの原価計算表に「前月繰越」と「備考」を追加しています。「前月繰越」に数字が入っているので、No.1(タンカー)とNo.2(客船)は、前月以前から製造されていて今月に引き継がれてきたことが分かります。No.3(コンテナ船)については、ゼロなので、今月に入ってから製造が開始されたことが分かります。

 先ほどの原価計算表にもあった、直接材料費、直接労務費、直接経費、製造間接費の数字は製造指図書から写された、「当期投入高」です。

 当月中に完成し、注文主にNo.1(タンカー)とNo.2(客船)は、この後、説明するように、「仕掛品」勘定から「製品」勘定に振り替えられます。一方、未完成のNo.3(コンテナ船)は、「仕掛品」勘定に残されます。ちなみに、「仕掛品」というのは、「作りかけのもの」という意味です。

 

原価計算表と「仕掛品」勘定、「製品」勘定 

 「仕掛品」勘定の借方の「前月繰越」は、作りかけの状態で前月から引き継いだNo.1(タンカー)とNo.2(客船)の数字です。その下の、直接材料費以下の項目は、「当月投入高」です。

 貸方の「製品」は、完成して「製品」勘定に振り替えられたNo.1(タンカー)とNo.2(客船)の数字です。「製品」勘定に振り替えられたので、数字の前に「製品」と記されています。「次月繰越」となっているのは、未完成のNo.3(コンテナ船)の数字です。

 「製品」勘定の借方の「仕掛品」は、完成して「仕掛品」勘定から振り替えられてきたNo.1(タンカー)とNo.2(客船)の数字です。「仕掛品」勘定から振り替えられてきたので、「仕掛品」と記されています。

 「製品」勘定の貸方の「売上原価」については、No.1(タンカー)とNo.2(客船)が完成して、注文主に引き渡されているので、数字が「売上原価」勘定に振り替えられたため、「売上原価」と記されています。

日商簿記検定2級「工業簿記」攻略とらの巻 ⑧「中身」と「器」の話、経費とは

⑧「中身」と「器」の話、経費とは

 材料費と労務費以外の費用が経費です。経費には以下のようなものがあります。

(1)支払経費

外注加工賃、特許権使用料など

(2)月割経費

工場建物の減価償却費や賃借料など

(3)測定経費

電気代、ガス代

(4)発生経費

材料棚卸減耗費

 

 これらのうち、外注加工賃、特許権使用料は、直接経費ですが、それ以外はすべて間接経費です。

 

 経費の処理には、(a)経費の諸勘定を用いない処理と(b)経費の諸勘定を用いる処理があります。

(a)経費の諸勘定を用いない処理

 例えば、外注加工賃は、直接経費なので、「仕掛品」勘定で処理し、工場建物の減価償却費は、「製造間接費」勘定で処理します。

 

(b)経費の諸勘定を用いる処理

 例えば、「外注加工賃」勘定や「減価償却費」勘定を用いて処理し、外注加工賃などの直接経費は、「仕掛品」勘定に振替え、減価償却費などの間接経費は、「製造間接費」勘定に振替えます。